新国立競技場問題にみる責任不在という日本病その1

こんにちは
アークブレインの田村誠邦です。

8月に入り、連日35度を超えるような猛暑
日が続いています。

昨日も、ある用事で埼玉県のある街に出か
けたのですが、わずか10分ほど歩くだけで
汗が噴き出して、頭がくらくらするような
暑さでした。

さて、やや旧聞に属しますが、去る7月17
日に、もめにもめていた新国立競技場の建
設問題が、安倍首相の「決断」により白紙
撤回されました。

2012年11月15日のザハ・ハディッドの最優
秀案決定から2年8か月、2013年8月15日に
槇文彦氏がJIA MAGAZINE295号に発表した
建設白紙見直しの提言から1年11カ月後の
白紙撤回の決断でしたが、あまりにも遅き
に失した感がします。

17日の会見で、安倍首相は約1か月前から
見直しの検討に入った」と述べていますが、
実態は、安保法制で支持率が急低下した
安倍首相が、新国立競技場問題でさらなる
失政を糾弾されることを恐れての決断と
思われます。

その証拠に、その約3週間前の6月23日に
競技場建設の事業主体である日本スポーツ
振興センター(JSC)はザハ・ハディド
氏の事務所に、新たに「新国立競技場の施
工段階におけるデザイン監修業務」1億7
千万円を発注しています。

JSCがザハ事務所と既に交わした契約は、
上記のほか「フレームワーク設計に関する
デザイン監修業務」、「基本設計に関する
デザイン監修業務」、「実施設計に関する
デザイン監修業務」の3本あり、今年4月
までに合計13億円が支払われています。

これだけの大金が支払われているからこそ
ザハ案の白紙撤回でも、ザハの事務所から
訴訟で訴えられる可能性は低いということ
なのでしょう。

このほか、日建設計・梓設計等への各種設
計業務、山下設計・山下ピー・エム・コン
サルタンツ等への発注支援業務、大成建設
竹中工務店等への技術協力業務など、ザハ
事務所への発注をあわせ、合計59億円も
の金額がすでに支払済みだそうです。

この金額は、オリンピックなどでの活躍が
期待される一流選手への強化費の3年分に
当るそうですから、JSCはなんという無
駄遣いをしてしまったのでしょうか。

しかもこのお金は、もとをただせば我々
国民の払った税金をもとにしているのです
から、我々国民はもっとこの問題について
怒るべきなのです。

そして、JSCは自分で稼いだお金でなく
国からあてがわれた予算で、この事業を
行おうとしていたというところに、今回の
新国立競技場建設問題の根っこがあるよう
に思えます。

私自身は、ザハの事務所を含めて、上記に
名前を挙げた企業に、今回の新国立競技場
建設問題についての中核的な責任があると
は思っていません。

ただし、発注者支援業務を受託した山下設
計・山下ピー・エム・コンサルタンツ他JV
には、明確なコストと技術的実現可能性に
ついての的確なアドバイスを発注者である
JSCに示すという業務をなし得ていたの
かどうか、大きな疑問が残ります。

今回の新国立競技場建設問題は、ザハの斬
新なデザイン案が、膨大な予算超過を招い
た元凶のように言われることが多いのです
が、私自身は、問題の所在は明らかに発注
者側であるJSCや文部科学省、そしてコ
ンペの要綱や審査体制にあったと思います。

建設費については、2012年7月20日に発表
された、新国立競技場国際デザイン・コン
クール募集要項では、約1300億円という数
字がデザイン提案の目安として提示されて
いました。

それが、2013年10月19日に、下村博文五輪
担当相が、ザハの当選案をもとに試算した
結果として、約3000億円になることを発表
しました。

その結果を受けてJSCは案のコンパクト
化(約29万㎡を約22万㎡に)を図ることを
決定し、2014年5月28日に、基本設計案と
して約1625億円(2013年7月時点の単価、
消費税5%で試算)を発表しました。

ところが、2015年7月7日に示された設計
概要案では、可動席の簡素化、空調設備の
一部見直し、ペデストリアンデッキの縮小
等の案全体の縮小化を図っているにもかか
わらず、目標工事費が2520億円に膨らんで
しまったのです。

その理由としては、消費税増40億円程度、
建設資材や労務費の高騰(25%程度)350
億円程度、新国立競技場の特殊性(屋根鉄
骨、スタンド鉄骨、内外装、大量の建設発
生土)765億円程度だというのです。

コンペ時1300億円が、ザハ案の採用が決
まって約3000億円、これを規模縮小して
1625億円、これをさらに見直しを図ると
2520億円とは、民間工事ではありえない
迷走であり、これで建設を強行していたら
世紀の笑いものになっていたと思います。

こうした迷走の最大の原因は、発注主体で
あるJSCの発注者としての自覚のなさに
あることは明らかですが、同時に監督官庁
としての文部科学省、国を含めた無責任
体制に最大の問題があると思います。

これは、いわば日本病ともいえる構造的な
病いであり、東日本大震災後の被災地復興
での公共事業の膨大な無駄遣い(住民の意
向を無視した防潮堤や、需要を無視した
膨大な土地区画整理事業等)にも共通する
大きな問題だと思います。

つまり、オリンピックという国を挙げての
イベントや、震災復興という大義名分が
あれば、それによる将来に渡るコスト負担
や環境への影響などを一切考えずに突き進
む無責任体制が許される土壌が、わが国に
根深く存在しているということです。

ただ、今回の新国立競技場建設問題につい
ては、槇文彦氏の問題提起の後の世論の
盛り上がりによって、なんとか国の暴走に
歯止めをかけることができたという意味で
大変意義深い出来事だと思います。

この問題については、まだ書き足りない
ことがあるので、次回も取り上げたいと
思います。

田村誠邦

■編集後記

昨日の男子サッカー東アジア杯、ご覧に
なったでしょうか?

1-2と北朝鮮に逆転された日本代表で
したが、観ていて、こんなに歯がゆくて、
腹立たしい思いをした試合も少なかった
ように思えます。

身長2m違いFWの選手が後半に出てき
ただけで、簡単に2失点してしまうとは、
先日のW杯一次予選のシンガポール戦の
引き分けといい、ファンにとってはイラ
イラが募る試合が続きます。

あと2試合の東アジア杯ですが、日本代
表には、猛暑を吹き飛ばすほどの気概を
見せてもらいたものです。

**************************************************
株式会社アークブレイン
代表取締役 田村誠邦(明治大学理工学部 特任教授)

〒106-0032 東京都港区六本木7-3-12
六本木インターナショナルビル8F
連絡先: 03-5770-7291(平日10時~17時)
**************************************************
▼株式会社アークブレイン
http://www.abrain.co.jp/
▼ARC通信
http://www.abrain.biz/
▼クライアント・アドバイザー養成塾
http://www.abrain.biz/tamura/
▼Andozaka COIN
http://www.andozaka-coin.com/
**************************************************

購読停止は次のURLをクリックしてください
https://…

メールアドレスの変更は次のURLをクリックしてください
https://…