日本経済の不安要素その3:米国経済の好調さは本物か?

こんにちは
アークブレインの田村誠邦です。

梅雨も明け、一気に夏本番の陽気になって
きました。

さて、6月19日のメルマガで「景気回復は
本物か?」というテーマを取り上げてから
1か月余りが経ちましたが、その間に世の
中の雰囲気は、すっかり変わってしまった
ようです。

1か月前には第一四半期GDP成長率が年率
2.4%増と事前予測より好調で、3月期の
東証上場企業の決算が、43兆円と過去最高
を記録し、東証一部の株式時価総額も史上
最高となるなど、日本経済を取り巻く環境
は、極めて順調に見えていました。

海外に目を転じても、ギリシャ問題の懸念
はあったものの、中国経済については6月
12日に上海総合指数が今年最高値を付ける
など、まだ大きな問題は発覚していなかっ
たのです。

しかし、その後の経緯は皆さんもご存知の
通りで、上海市場はわずか3週間に30%以
上の下落を示し、ギリシャの国民投票の結
果、EUの財政再建策をギリシャ国民が拒否
するなど、世界経済は大混乱に陥いること
になりました。

こうした情勢を受けて日本国内でも、中国
バブルの崩壊や欧州金融危機を憂慮する報
道や記事が多くなり、6月中旬までの景気
回復感は一気に吹き飛んだ状況です。

また、アベノミクスによる株価の上昇と経
済回復への期待で高い支持率を誇っていた
安倍政権も、安全保障関連法案の強行採決
などで、その支持率にもかげりがみられる
ようになりました。

その後、中国市場については、中国政府の
なりふり構わぬ市場介入の効果もあって、
4000の大台を回復するところまで回復し、
ギリシャ問題についても、チプラス首相が
EUの提案を受け入れたことから、欧州金融
市場も落ち着きつつあるようです。

しかし、中国にしろ、欧州にしろ、金融危
機を招きかねない根本原因(中国について
は過剰生産設備、地方政府や国有企業の不
良債権問題、経済成長率の低下、欧州につ
いては域内の経済格差問題、銀行等の不良
債権問題等)は解決していません。

特に中国市場については、株価の推移が、
1929年の世界大恐慌や、2008年のリーマン
ショック時と似ていると言われており、今
週いっぱいに戻りのピークを付けてから、
8月いっぱいまでに、さらなる大暴落を記
録する恐れが強いように思えます。

さてこうした中で、唯一好調に見えるのが
米国経済で、先週末の17日にはナスダック
総合株価指数が新高値を付けています。

さまざまな問題を抱える欧州やアジアに比
べ、米国経済が好調なのは確かだと思いま
すが、実は米国経済にも、いくつかの懸念
材料があるようにも思えます。

第一の不安要因は米連邦準備理事会FRB
が主導してきた量的緩和の出口についてで
す。

FRBは、リーマンショックからの経済回
復の手段として、2008年11月から3段階に
わたり、計400兆円近い量的緩和政策を実行
し、米国債やMBSの買入を通じて市場に
資金を供給し続けてきました。

FRBは、昨年10月に量的緩和政策の縮小
を決定し、新たな証券購入の規模を縮小す
るとともに、米経済状況とその見通しが安
定した段階で利上げに踏み切るなどとした
出口戦略の大原則も公表しました。

量的緩和政策は、リーマンショック後の緊
急避難的な政策としてスタートしましたが
その後、日本や欧州も同様の政策を実施す
ることとなり、実は現在の世界経済の成長
や安定、株価の上昇傾向は、この量的緩和
政策によるところが大きいのです。

問題は、この量的緩和政策は、FRB等の
中央銀行が、国債などの債券や証券を買い
上げて資金を市場に供給していく施策です
から、いつまでも続けていくことは不可能
で、必ず出口が必要なことです。

量的緩和政策の出口は、一つには、国債の
買入を通した実質ゼロ金利が終わることを
意味し、もう一つには準備預金残高を正常
な水準に戻すということを意味します。

実質ゼロ金利の終焉は、企業の調達金利の
上昇を意味し、実体経済にはマイナスの影
響があるだけでなく、前回のメルマガに書
いたように、国債価格等の急落を招き、デ
リバティブ取引等を行っていた金融機関等
の経営不安を招く可能性もあります。

また、準備預金残高の正常化というのは、
金融機関が中央銀行に預ける当座預金残高
を、法定準備金のレベルまで戻すというこ
とです。

しかし、現在のFRBの準備預金残高は、
法定準備金の20倍を超える規模であり、市
場からの資金回収は、経済縮小を招きかね
ないと言われています。

実はこの量的緩和政策からの出口問題は、
米国だけでなく、日本も欧州も、全く同じ
問題を抱えているのです。

再び米国経済の不安材料に話を戻すと、第
二の懸念は、現在の米国の株式市場の好調
さが、実体経済を反映したものではないの
ではないかという疑念があることです。

米国の株式市場は、リーマンショック後の
底値から、6年以上も上昇傾向を続けてい
ますが、最近目立つのは、自社株買いの拡
大です。

米国の調査会社ビリニー・アソシエーツに
よると、米国企業がこの4月に発表した
新たな自社株買い枠は1410億ドル(約16兆
9000億円)と2014年4月に比べて121%増加
し、単月の記録を塗り替えたそうです。

このペースで行けば今年発表される自社株
買いは1兆2000億ドルに達し、2007年に記
録した過去最高の8630億ドルを大幅に更新
する見込みとのことです。

米国企業は金融危機後に、量的緩和の効果
もあって、多額の現金を蓄え、その多くを
自社株買いなどの株主還元に充てています。

そうした活動により株式数が減少すること
によって株価が支えられ、6年間にわたる
相場上昇に大きく貢献したと考えられます。

しかし、本来は、企業は事業によって稼い
だ資金を、次の事業展開のために投資し、
さらなる発展を遂げていくものです。

そうした事業のための投資よりも、株主
還元のための自社株買いなどを優先すると
いうのは、何か本末転倒のような気がしま
す。

実はこうした自社株買いは、企業の経営者
にとって、株式の上昇が最大の関心事であ
るために実行されていると言われています。

それは、株主の評価という面もありますが、
もう一つには、ストックオプションなどの
仕組みを通して、企業経営者自身の報酬が
株価に連動する仕組みが作られていること
によるものと考えられるのです。

したがって、現在の米国の株高が、企業の
業績そのものよりも、ストックオプション
などの株主還元策に支えられた見せかけの
株高である可能性は相当高いのです。

また実体経済と株価の推移を見てもリーマ
ンショック後の米国株式市場の好調さは、
何か不自然なものを感じます。

2009年3月から今年4月までの6年余りの
間のニュヨークダウの年率平均上昇率は
17.9%と極めて高いものがありますが、
その間のGDP実質成長率はわずか2.22%
にしか過ぎません。

米国でも、実体経済の成長率と株式市場の
上昇率との相関関係は、きわめて弱くなっ
ており、株式市場の上昇は、株式を大量に
保有する富裕層や経営者層の資産の増加を
もたし、経済格差の拡大をもたらすだけと
なっているようです。

また、実体経済の状況を表す貨幣の流通速
度が大幅に低下し、世界貿易の荷動きの活
発さを表すバルチックドライ海運指数が、
この30年間の最低値を記録するなど、米国
を中心とする世界経済の減速は、さまざま
な統計指数からかなり明白です。

実体経済を反映しない株高=バブルは、い
ずれ弾けて解消されるのが、歴史の証明す
るところです。

上海市場の動向にもよりますが、米国の株
高もこの秋には弾けてしまい、世界的な金
融恐慌になる可能性も、3割から5割程度
はありそうな気がします。

田村 誠邦

■編集後記

梅雨明けとともに、一気に夏本番となり、
昼間は外出したくない気温となっています。

冷夏よりは、暑い夏の方が夏らしくていい
と思いますが、それにしても、連日35度を
超えるような暑さはたまりません。

ちょっと前まで、早く梅雨が明けないかと
真夏の到来を待っていたのに、いざ夏本番
となると、この暑さはどうにかならないか
と思うのですから、人間というのはわがま
まな生き物のようですね。

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代表取締役 田村誠邦(明治大学理工学部 特任教授)

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